与北の茶堂跡を過ぎると、道の雰囲気が変わった。
車の多い県道から離れ、田畑の間を細い道が続く。
丸亀港からここまで、金毘羅街道をたどってはいたものの、周囲には駅や住宅、幹線道路があり、現代の町の中を歩いている感覚の方が強かった。
けれど、ここから先は少し違う。
石灯籠や丁石が次々と現れ、昔から続く道の形がはっきり見えてくる。
金毘羅へ近づくほど、周囲の景色が少しずつ昔へ戻っていくようだった。
目次
与北を過ぎ、角上組石灯籠へ
与北から南へ進むと、街道沿いに角上組石灯籠が現れる。

石灯籠が残る道を歩いていると、ここまでの市街地とは空気が変わったことがよく分かる。
道路そのものは現在も生活道路として使われている。
それでも、道の脇に立つ石造物や周囲の田畑が、昔の街道の雰囲気を残している。
平成の丁石「九十丁」
さらに進むと、田園の中に平成の丁石「九十丁」が立っている。

近くには古い道標も残る。

丸亀側で見た「五丁」から始まり、「二十丁」「五十丁」「七十丁」と数字を追ってきた。
そして、九十丁。
歩いてきた距離が数字として積み重なっていく。
新しい丁石の隣に古い道標が立っている光景も、この街道らしい。
昔の旅人のための目印と、現在の街道歩きを支える目印が、同じ場所で並んでいる。
県道200号と県道4号の分岐
やがて道は分岐する。

手前から左奥へ向かうのが県道200号。
金毘羅街道は、右奥へ延びる県道4号へ入る。
昔からの街道がそのまま一本の道路として残っているわけではない。
現在の県道や生活道路の中に道筋が溶け込み、ときどき分岐しながら琴平へ続いている。
こうした場所で進む方向を確認することも、旧街道歩きの一部だ。
公文の茶堂跡と山神うどん
街道沿いには、山神うどんがある。

その裏手が、公文の茶堂跡らしい。

金毘羅街道では、これまでにも郡家や与北で茶堂跡を見てきた。
徒歩で長い距離を旅した時代、茶堂は旅人が休憩し、次の道へ備える場所だった。
現代の飲食店のすぐそばに、昔の旅人が足を休めた茶堂跡がある。
時代は変わっても、街道沿いで人が立ち止まる場所が重なっているのが面白い。
富隈神社と善住木食上人
さらに進むと、富隈神社がある。
ここには善住木食上人や護摩堂跡にまつわる痕跡も残されている。

金毘羅街道を歩いていると、単に道をたどるだけではなく、街道沿いに残るさまざまな信仰の痕跡にも出会う。
金毘羅参りの道は、目的地だけが信仰の場所だったわけではない。
道中にも神社や祠、石灯籠があり、旅人の目に触れていた。
こうした場所を拾いながら歩くと、街道そのものが信仰の風景だったことが分かる。
平成の丁石「百十丁」
さらに南へ進むと、平成の丁石「百十丁」が現れる。

九十丁から百十丁へ。
数字が増えるにつれて、琴平が近づいていることを実感する。
周囲の風景も、さらに田園色が濃くなる。
交通量の多い道路を歩いていた第3話の区間とは、同じ街道とは思えないほど静かだ。
自然石の灯籠と124丁石
街道沿いには、形の整った石灯籠とは少し違う、自然石を生かした灯籠が残っている。
そのそばには124丁石。

ここまで来ると、丁石の数字も大きくなってきた。
道沿いに残る石造物をひとつずつ拾いながら進むと、金毘羅へ向かう旅そのものが形として残っているように感じる。
131丁石
さらに進むと、131丁石。

あとどれくらいなのか。
昔の旅人も、こうして丁石の数字を見ながら金毘羅を目指したのだろう。
歩いているこちらも、数字を見るたびに終点が近づいていることを意識する。
横瀬の石鳥居
琴平へ近づくと、街道沿いの風景はさらに変わる。
大きな横瀬の石鳥居が現れる。

丸亀の市街地では住宅や商店の間に街道の痕跡を探していた。
しかしここまで来ると、石鳥居や灯籠が風景の中で強い存在感を持っている。
「金毘羅へ向かっている」という感覚が、急に濃くなる。
横瀬の石灯籠と地蔵堂
石鳥居の先には、横瀬の石灯籠と地蔵堂が残る。


田畑や古い道、石鳥居、石灯籠、地蔵堂。
歩いてきた道の周囲に、昔から続くものが次々と現れる。
ここまで来ると、丸亀港を出発したときとは景色がまったく違っていた。
琴平へ近づくほど、街道の風景そのものが濃くなっていく。
木々の向こうに高灯籠
そして、木々の向こうに大きな灯籠が見えた。
高灯籠だ。

遠くからでも分かるその姿は、ここまで歩いてきた道の終点を知らせているように見えた。
丸亀港から歩き始め、城下町を抜け、市街地を離れ、田畑の間を進んできた。
その先に、ようやく高灯籠が現れた。

高灯籠まで来ると、金毘羅の町に入ったという実感が一気に強くなる。

丸亀港から、一本の道でつながった
丸亀港の太助灯籠から始めた今回の街道歩き。
港から城下町へ。
中府一の鳥居を抜け、柞原、郡家、与北を通り、琴平へ。
資料館で見た「丸亀から金毘羅へ続く道」は、実際に歩いてみることで一本につながった。
最も印象に残ったのは、琴平へ近づくにつれて風景が変わっていったことだ。
市街地の中に埋もれていた旧街道は、やがて田畑の中の細い道になり、石灯籠や丁石、茶堂跡、鳥居が次々と現れる。
現代の町から、少しずつ昔の街道へ。
歩くほどに景色がタイムスリップしていくようだった。
金毘羅街道は、昔の道がそのまま保存されている場所ではない。
現在の道路や町の中に残る痕跡を拾いながら、昔の旅を想像する道だ。
だからこそ、車ではなく歩いてたどる面白さがある。
丸亀港から高灯籠まで。
海から始まった金毘羅参りの道を、自分の足で最後までたどることができた。
立ち寄りメモ
今回歩いた区間:与北茶堂跡周辺 → 角上組石灯籠 → 90丁 → 公文 → 富隈神社 → 110丁 → 124丁 → 131丁 → 横瀬 → 高灯籠
道の特徴:与北以南は、それまでより交通量の少ない旧道や田園の道が増えます。石灯籠や丁石、鳥居なども多く、今回の街道歩きで最も金毘羅街道らしい雰囲気を感じられた区間でした。
シューズ:今回もALTRA TORIN 8を使用。
舗装路が中心ですが距離が長いため、クッション性のあるシューズが歩きやすいです。
補給・休憩:琴平へ近づくまでは、市街地に比べて飲食店やコンビニが少なくなる区間があります。飲料は早めに確保しておくと安心です。
歩くときの注意:生活道路や県道と重なる場所もあります。史跡や丁石を見る際は、道路上で立ち止まらず、車の通行に注意してください。
金毘羅街道を歩く
👉 第1話:丸亀城と金毘羅街道
👉 第2話:丸亀港から中府一の鳥居へ
👉 第3話:中府から与北へ
👉 第4話:与北から琴平・高灯籠へ
👉 街道はアルトラ トーリン8で歩く
街道マップ
金毘羅街道のルートは、丸亀市公式「金毘羅街道」の地図も参考になります。

